ホーム > Reading/読書 > 【読書記録】大山巌1 戊辰戦争

【読書記録】大山巌1 戊辰戦争

2010年6月22日

(この読書記録は本が好き! 大山巌1 戊辰戦争に寄せたものです。少し手直ししてあります。)

西郷隆盛と共に育った大山巌を、幼年時代から戊辰戦争を通して見ていくもの。

薩英戦争の詳細、それによる大山巌の砲術への意識、戊辰戦争、

朝鮮の修好拒否、外交官交換拒否、日本人入国制限、

日本人漂流者の救助拒否、使節用宿舎の破壊から来る、

征韓論による明治政府の動揺と西郷の下野までが描かれている。

冷静な書き方であり、無駄な感情の抑揚は見られず、史実に沿って書く姿勢が伝わってくる。

資料の一つとして読んでいたので、

特に気になったところは学生時代に身につかなかった点である。

まず、薩摩藩が極端な軍事優先地域であったこと。

(明治6年全国士族調査によると、”『士族が住民の60%を占めたことが、記録されている。

全国平均では士族は10%以下であるから、その高率が理解できる。』”とある)

その貧苦を支え、明治維新の軍資金を支えたものが、

奄美諸島の黒砂糖を格安で買い上げ、大阪で売ることで大きな利益をあげたことにあるようだ。

『明治維新は奄美諸島の黒砂糖、いいかえれば薩摩藩の暴利政策に対する島民の忍耐で成就された、といえるかもしれない。(p12)』

また、幕臣の勘定奉行小栗上野介忠順の言葉は、現在にも通用する。

『一言ヲ以テ国を亡ボス可キモノアリヤ。ドウカナラウト云フ一言、之レナリ。幕府ガ滅亡シタルハ此の一言ナリ』(p18)

どうにかなるだろう、なんとかなるだろう、といった根拠のない希望的観測が幕府の滅亡を導いたと指摘するこの言葉は、

現代において重要な教訓を持っているのではないだろうか。

薩英戦争は、英国と薩摩藩の武器能力と技術力の差を露呈したものとは学んでいたが、

現在では

『海軍兵力の不足と劣質』(p114)

に敗北の要因があったのだとよくわかる。

海洋国家としての日本が戦略を考える上で当然、必要なものであり、これがあって海上輸送や交易ができる。

交易の基礎は安全にあり、安全は自国で保障できなければならないことを痛感させられる。

そして戊辰戦争に対するフランスとイギリスの干渉の多用さは目を引く。

特に官軍の江戸攻撃計画の際に、英国公使が、

『もし江戸攻撃を断行するなら『居留民保護の目的』で出兵せざるを得なくなる』(p221)

、とし、

フランス公使も勝海舟に対し、

徳川慶喜をフランスに亡命させるために江戸攻撃があるならフランス兵を出兵させるとしていたのだから、
江戸攻防戦が行われれば、江戸が英仏紛争の場となったかもしれない(p222)

というところは驚きである。

さらに、大山が述べる『おいが普仏戦争で痛感したのは、兵器の独立ちゅうこつ。』というのは確かにその通りだと感じる。

これは、ひいては技術の独立である。

今さらではあるが、この必要性、重要性が、自分には曖昧な認識しかなかったのだ。

出版社: 文藝春秋

ISBN-10: 4167141191

ISBN-13: 978-4167141196

発売日: 1985/06

拍手を贈る

広告
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。