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Peter Ferdinand Drucker/P・F・ドラッカー4 善への誘惑

2009年11月11日

#20060228#作成

#20070131#掲載

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「伝統的なカトリック大学は、二流のレベルのままでは、アメリカでは存続できない。

(中略)

 大学が『偉大な大学』になればなるほど、

 それだけ完全に世俗化しなければならなくなるということだ。

 『偉大な大学』と『カトリック大学』の両方にはなれない。

 ジンマーマン神父の前提から帰結できる論理的結論はただひとつ、

 新教徒たち、すなわちハーバード、イエール、プリンストン、コロンビアなどが100年前にやったこと、

 つまり宗派性がなく、

 特定の教派との関係をなくして組織的宗教との束縛を一切断つことだけしかない。

 それは誰の害にもなっていないし、

 私の判断する限りでは、プロテスタントの諸宗派にも弊害とはならなかった。」

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「カトリックというのは、

 近代的学問などと同じような合理主義であってはならないという事は承知している。

 しかし反面、原理主義者などと同じように反知性主義のままではいられなくなっている。

 われわれがそうしようとするといつでも、

 私が出かけていって上品に騒ぎ立てなければならないような、

 あの恐ろしい、堕落して知的に破産した小さな学校のようなものにすぐと似てくるのだ。」

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「トム、君も知ってのとおり、

 ジンマーマンの論文を読み終わると、私は図書室に頼んで、

 セント・ジェロームのカレッジと大学院など学校全部の履修案内書を取り寄せてみた。

 各課目が行っているコースは、すべてをあわせると数千ページにも上る大したものになる。

 だが、神の知識に関係あると思われるもの、

 あるいは学生をそこまで導くと思われるものは、

 ごく僅かしか見つからなかった。

 事実、セント・ジェロームが教えているものと、

 大抵の非カトリック大学が教えているものとの間に、

 きわめて僅かな違いしか見出せなかったのだ。」

「ですが司教様、それならなぜ学習面をそれほど強調され、

 とくに教区内の司祭全員が世俗面での学問や専門的な学科でも

 高い学位を取るように要求されるのですか。」

「司祭はゼネラリストだ。

 そしてゼネラリストは、1つの分野でエキスパートであり、

 名人芸の水準を保持できるようにならねばならない。

 さもなくば、好事家(ディレッタント)になってしまう。

 これがマネジメントの原則というものだ。

 だが同時に、司祭はもはや無学文盲社会で唯一の読み書きできる人間ではない。

 教育のある俗人の尊敬をかちえるためには、

 学問や技術で彼らと同等でなければならないし、

 本当は彼らより優れていなければならないのだ。」

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「本当の悩みの種は、

 いったい誰のためにこんなことをやっているかがわからないことなのだ。

 アーウィン、

 この建物の玄関の入り口にかかった碑銘

『神のより大いなる栄光のために』を知っているだろう。

 ずっとこれまで毎朝、仕事に向かうとき、この文句は私の気分を昂揚させ、

 私は、『神のより大いなる栄光のために』と、一人口ずさんだものだ。」

「私もだよ」

「それが、例のハロウェイの一件があってからは全然だめなんだ。

 今では、碑銘のほうが私を嘲り、なぶるんだ。

 『私のより大いなる栄光のために』だと言ってね。

 すべてが、虚栄心、個人的な野心、勢力拡大欲、利己心、そして、

 自分は偉大な人間なのだと自分に示したいという欲望に他ならないと思えるんだ。」

「ハインツ、そんな言い方はすぐに止めるんだ。

 君の話し振りはまるで甘やかされたティーンエイジャーみたいだぞ。

 君は、哲学や論理学、そして神学で学んだ事を全部忘れてしまったのか。

 真の利己心のありかを知っている人こそ聖人だという定義を忘れてしまったのか。

 仕事が重要で、仕事をする人間が重要じゃないっていうのか。

 自分がやり遂げた事を知らないのは、愚劣なんてもんじゃない。それ以上だ。

 それは一つの罪だ。」

「アーウィン、君が私を助けようとしている事、

 また好意でそういってくれていることもよくわかる。

 心より感謝している。本当だ。

 しかし、君の言うことは完全に詭弁であり、君もまたそれを知っている。」

「もっとひどい言い方をされた事もあるがね。

 しかし、君には、自己の責任から逃れて、

 心の痛手や自己憐憫などに逃げ込むような真似は出来ないはずだ。」

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「私を悩まし、狼狽させ、混乱させているのは、

 自分が全然変わっていないとわかったことなんだ。

 修道院に入る前に付き合った女の子たちを利用したのと全く同じやり方で、

 人々を利用している。

 自分の目的のために、自分の達成したい事のために、

 そして、自己満足と、自己の栄光のために、利用しているんだ。」

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「ジンマーマン神父は回復しないでしょう。

 何に苦しんでいるにせよ、

 自分自身と今までやってきた事に、自信と信念を無くされたようです。

 彼は地位を追われたのではなくて、

 最初の挑戦の際に、自ら退位してしまったのです。」

「君が描き出してくれた全ての些細な事は、単なる兆候に過ぎないと言いたい。

 本当の問題点はもっと深いところにあると私は確信している。

(中略)

 カトリック大学が第一級になるには何をすべきか、

 『第一級の大学』がカトリックであるには何をすべきか、という点だ。」

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「だが、本当の問題点が何であるにしても、

 我々はハインツ・ジンマーマンを助けなければならない。

 彼の唯一の罪は、官僚としてではなく、クリスチャンのように、司祭のように、

 善きことをなすという誘惑に屈したことにあるんだよ。」

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「司教様とそのご立派な聖務には満腔の敬意を表しはいたしますが、

 もし私が管理職につかなければならないとすれば、

 教会よりもビジネスのほうが行動範囲が広く、

 大きな貢献ができるものと思われます。

 聖職においては、規則、規定、事務処理が全てです。

 主な仕事は、現状維持、変化を防ぎ、刷新を思いとどまらせ、実験を試みようとしない事です。

 前にも何回かうまくいったことをほどほど上手にする事です。

 そして管理の仕事といっても、ほとんどは些細な事ばかりです。

 あなたのお時間とエネルギーがどれほど多く、

 アルコール中毒の司祭たちの看護のために費やされているかをご存知でしょうか。

 そして次は政治的な駆け引きや力関係です。

 もううんざりです。

 もし、主が本当に私に管理職になれといわれるのでしたら、

 どんなに聖職が好きであっても、私はその中では動きません。」

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「トムは間違っている。小教区の司祭が無事に仕事が務まるのは、

 だれかが私の今いるような地位にいて、事務処理の面倒を見たり、

 アルコール中毒の司祭や細かい力関係上の心配をしたり、

 また人を教育啓発し、正しく配置しているからこそなのだ。

(中略)

 しかし、セント・ジェロームでの事件を見たあとでもあり、

 善への誘惑に負けたくないと思うのも、もっともなことだ。」

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「『しかし、おまえ自身についてはどうなのだ。』

 オマーリー司教は突然自分に向かっての問いを投げかけた。

 すると、暗稽たる絶望の高まりが起こり、

 司教は両手で頭がゆれないように支え、

 吐き気とめまいと戦わなければならなかった。」

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「皆が不道徳なるものについて話すとき、

 通常の意味としてはそれは肉欲の罪のことである。

 だが、精神の罪はそれ以上に不道徳である。

 それは、うぬぼれや妬みの罪であり、隣人に対して偽証を成す罪でもある。」

「私はそういった罪を相手に戦うことなく、それに屈服し、

 その善良な人間を、優れたクリスチャンを、同僚の司祭を犠牲にしたうえ、

 ローマ教皇使節からの詰問や議論や批判や具合の悪い事実の公表などを避けてきた。

 しかも、その怠慢と失敗を罰せられることなく

 <大司教>にされるほど褒められ報いられているのだ。」

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「確かに、そうすることは正しいことなのだ、といつも自分に言い聞かせる事は出来る。

 キャピタル・シティは何年も前に、大司教区になるべきだった。

『私の』聖職者たちのために、

 そしてこのニュースが大きな喜びと誇りをもたらす教区内の信者たちのために、

 それを行っているのだと自分を納得させる事も出来る。

 それは一応の真実だが、必ずしも、全く真実とは言えない。

 自分でもそれを望んでいるのがわかっているし──────

 さらにまずいことに、それが楽しみとなる事も知っているのだ。」

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#拍手を贈る

ゲーテ『ファウスト』の望楼守。変化を告げる者。社会生態学者。マネジメント開発者。

クレアモント大学院の教授。オーストリア出身の文筆家。

誕生日を8日後に控えて2005年11月11日逝去。享年95歳。

05年11月19日、ドラッカー学会 Workshop for Studies of Peter F. Drucker’s Management Philosophyが設立されました。

他にドラッカー年譜、訳者である上田惇生ホームページドラッカー アーカイブ(英語)

ドラッカー スクールドラッカースクール 日本語ページなどがあります。

ヒトラーにインタビューし、チャーチルに『「経済人」の終わり』で激賞を受け、

各国の民営化(再民間化のほうがしっくりくる)の方向を位置づけ、『創造的破壊』の提唱者シュンペーターと父が知り合いでした。
また、メアリー・パーカー・フォレット:管理の予言者の著者でもあり、その表紙で『フォレットはマネジメントの予言者であった』と語っています。

ここでは主に『歴史の哲学』、『変革の哲学』、『経営の哲学』、『仕事の哲学』、

傍観者の時代(ドラッカーわが軌跡)から紹介させていただいています。

 政治、行政、経営、経済、芸術、思想、あらゆる分野に従事される方に読んでいただきたい本です。

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