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日中韓露 歴史教科書はこんなに違う 鳥海 靖先生

#アジア諸国の発展から、アジア市場の重みが広がるにつれ、

#アジア諸国の歴史への興味が出てきた。

#彼らは何に反発し、どこで反日や抗日勢力が生産され、

#文化の違いや歴史観の違いが来るのか。

#それをいかにして埋めていくのか。

#それには諸外国の歴史教育が大きな影響を及ぼしている。

#急激な変化は期待できない。

#しかし、その違いがいかなるものか、どれだけのものかを知ることはできる。

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書名:日中韓露 歴史教科書はこんなに違う

著作:鳥海 靖先生

出版社: 扶桑社 (2005/08)

ISBN-10: 4594049648

ISBN-13: 978-4594049645

発売日: 2005/08

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「相手側の歴史の見方についての無知・無理解は、

現在の日韓・日中歴史問題に見られるように、往々にして非常に不毛で、

時には有害な政治的対立を生み出すことにもなる。

それを避けるには、国際的な歴史の相互理解を目指す自覚的な努力が、お互いに必要不可欠であろう。」

p4

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「社会主義国における歴史理解、あるいは歴史教育の基本的なあり方について頭に入れておく必要がある。

第三章で詳述する中国の場合でも同様であるが、そこでは、

歴史教育とは、何よりもまず、「政治教育」であり「思想教育」なのである。

その点で当然のことながら、

歴史教育がその国の政治権力や政治体制を支える正統派イデオロギーから自立することは期待できない。

またそれは、歴史事実をできるだけ広く客観的に取り上げて多角的に理解する、

という自由主義・民主主義諸国における常識的な歴史理解の基本的な理念とは、大きな差異がある。」

p31-32

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「マレーシアの場合を見ると、マレー系の人々が使う歴史教科書では、

『日本の占領、統治は厳しいものであったが、日本人の能率的な行政組織を学ぶことなどを通じて、

それはマレーシアの独立にとって大きな刺激となった』という意味のことが記されていた。」

p40

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「そうした事情で、日本に対する見方はかなり好意的なのだが、

同じマレーシアでも、日本軍のゲリラ狩りで多くの犠牲者を出した中国系の人々(華人)は、

このような見方に強い拒絶反応を示している。

華人の人たちの使う教科書では、日本軍の残虐性が強調されるのが通例である。

つまり、同じマレーシアでも、民族によって日本の占領についての歴史的理解・評価がかなり違うのである。

このような差異をきめ細かく、具体的に考察していくことが重要であり、

そうした実情を無視して、日本の東南アジア占領・統治の歴史的意義を安易にひとくくりにして論ずることは避けるべきであろう。」

p40-41

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「『残念なことに全ロシアの教科書と同じように、

(極東ロシア)地域の教科書の執筆者たちも、

この歴史の課程では、やはり軍事的・政治的性格の事実を中心に書いており、

(中略)その結果、最も近い隣国、日本のイメージは、

地域の教科書の執筆者のすべてが露日の全面的な協力という考えを支持しているにもかかわらず、

かなり好戦的で紛争好きで戦略的な国だ、というものになっている。」と批判的に指摘している

(オルガ・ステレロア「ロシア極東地域の中等教育用歴史教科書で日本の歴史がどのように紹介されているか」

2000年10月、東京における日露歴史教育会議での報告)

p51

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「国家史・民族史を超えた視点に立つ必要があることである。

筆者はもとより、歴史教育において国家や民族という枠組みを決して否定するわけではない。

歴史における国家や民族の重要な役割は十分に認めるが、

それが時代によって変化するものであることもまた理解しなければならない。」

p58

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「東アジアだけを例に取ってみても、

必ずしも『自由と民主主義』あるいは『人権』という基本的な価値観が共有されていないことは、

周知のごとくである。

歴史教育の基本的なありかたも大きく異なっているし、歴史問題の取り上げ方にもかなり差がある。

しかし逆に言えば、それだからこそ、安易に『共通の歴史理解』を論ずる以前に、

まずその違いについて、相互にしっかりと認識する自覚的な取り組みが、必要とされるのである。」

p75

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「韓国の場合は、日本と異なり、初等学校から高等学校のすべての段階で、

国史の領域では教科書・指導書とも国定(一種教科書)だということである。

(『韓国近・現代史』の教科書は検定)。」

p80

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「客観的事実としていえることは、現在、アジアでは国定教科書制度を採用している国々もあるが、

世界のいわゆる先進国の間では、国定教科書制度は、ほとんど行われていない

(日本教科書センター『新・日本の教科書』2004年)」

p83

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「地道な実証的研究をめざしている韓国の歴史家の中には、

今日の韓国の学校教育におけるいささか強すぎる民族主義的な歴史教育のあり方に疑問を抱き、

国際化の流れに取り残されないように努力している人たちも少なくない。」

p88

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「韓国の歴史教育の現場でも、檀君の古朝鮮建国物語の取り扱いについては、

いささかジレンマがあるようである。教科書の中には、建国の年が紀元前2333年と明示されているが、

これは、考古学的発掘から最近脚光を浴びるようになった中国最古の夏王朝の成立より、いっそう古いことになり、

朝鮮半島に青銅器文化が出現する以前になるから、

青銅器文化を土台に古朝鮮の国家が建設されたという記述との齟齬は免れない。」

p91

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「筆者自身が出席した日韓の歴史教育会議で、

たまたま、学校で檀君王検の古朝鮮建国をどう教えるかということが話題になった時、

韓国側出席者の若い大学教師が、「あれは神話ですから……」と言葉を濁すと、

別の年配の教員の人が毅然とした調子で、

「いや、檀君の古朝鮮建国物語は、歴史的事実として教えています」と明言した。

若い人の方は、ちょっと苦笑しながら、何も言わなかったが、考古学を含む歴史学の学問的成果と、

学校における民族主義の歴史教育との間のジレンマを感じさせる出来事であった。」

p91

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「2004年3月に韓国国会において、

『日帝強占下の親日・反民族行為真相究明特別法』

(のちに改正されて『親日』の表現は削除されたが・・・)が、

賛成151、反対2、棄権10という圧倒的多数で可決されたことは記憶に新しいが、

このことからもわかるように、

日本の植民地時代、『親日』は『反民族的行為』であって、悪以外の何物でもない。」

p131

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「日清戦争そのものについては韓国の教科書にはほとんど記述はない。

三国干渉についての記述はあるが、日清講和条約については何の説明もない。」

p150

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「したがって、同条約の第一条で、

清国が『朝鮮国ノ完全無欠ナル独立自主ノ国タルコト』を認めたという事実には触れられていない。

また、日清戦争以前の清国と朝鮮の宗属関係についても全く説明されていないのである。

おそらくそれは、韓国の民族主義的歴史観にとっては都合の悪い史実なのであろうが、

そのような清国と朝鮮に関する歴史的関係を抜きにして、

19世紀末における日清朝露を中心とする東アジアの国際関係や日本の対朝鮮政策を適切に理解するのは、

困難なのではあるまいか。」

p150-151

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「韓日協定(日韓基本条約)の調印は記されているが、

日本の5億ドル供与やその資金による経済開発には全く触れていない。

こうした韓国の国史教科書を読んで疑問に感ずることは、

植民地時代を通じて韓国の社会や生活がどう変わったのか、

またそれが、その後の国造りにどのように影響を及ぼしたのか、いわば植民地時代の遺産が、

独立回復後の新しい国家建設にどう活用されたのか(あるいは全く活用されなかったのか)、

という点が説得的に説明されていない点である。」

p163

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「たとえば、筆者の手元にある統計表(『日本近代史辞典付録』)では、

日韓併合の年である1910年に1331万人だた韓国の人口は、

1939年には2280万人となっている。29年間で人口がざっと1.7倍に増加した。」

p164

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「一般にこうした急激な人口増加は、

産業化の急速な展開、生産力の発展、生活水準の向上などを反映したものと考えられるが、

『日帝の苛酷な植民地支配』による『民族抹殺政策』のもとでどうしてこうした現象が起こりえたのか、

韓国社会の変化とどう関係づけて理解できるのか、

また植民地時代に多くの小学校が設立されて就学率が大幅に上昇したが、

こうした教育の普及が『光復』後の国造りにどのような影響を及ぼしたのか、

などなどの疑問がいっこうに氷解しないのである。」

p164

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「筆者自身が1900年代半ば以降に参加した日韓歴史教育会議において、

韓国の歴史家・歴史教育家の中から、これまでの民族主義的歴史観への冷静な検討を基礎に、

植民地時代の様々な遺産が、その後の韓国の国造りにどのように活用されたか、

先入観にとらわれずに、実証的に研究を進めるべきだとする発言や、

さらにそうした視点からの具体的な研究成果の一端が報告されたケースも、いろいろあった。

また、極端な民族主義的歴史教育が、

国際社会における歴史教育の常識的なあり方から大きくずれてしまうことに危惧の念を示す歴史家もあった。

しかし、『親日』派を悪玉視する現在の韓国の政治的・社会的風土の中では、

多角的な歴史理解が大きな発展をとげ、ただちに歴史教育に影響を及ぼすような可能性は、

正直なところ短期的にはあまり期待できないように思う。」

p165

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「日韓の歴史相互理解の試みは、一見成果が挙がらないように見えても、

長期的視野にたってあせらずに粘り強く地道に進めるほかはないであろう。」

p166

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「歴史問題というと、日本国内にはこれを日中・日韓間の固有の問題と考え、

日本だけが第二次世界大戦や植民地支配の歴史を直視していないか、

あるいはその処理が不適切であったから起こったかのような議論が横行しているが、

これは無知にもとづくものか、

あるいは特定の政治的目的を達成するための無知を装った議論かのいずれかであろう。」

p99

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「歴史を事実に即して冷静に観察すれば、

とりわけ20世紀前半までは、戦争や植民地支配はごく日常茶飯の出来事であり、

それを罪悪視する価値観は、国際社会に定着していたとは言い難かったし、

また、国境の変更や領土紛争も日常的な出来事であった。

したがって、戦争した相手国や近隣諸国・諸地域との歴史問題は、むしろ存在するのが当然のことであって、

決して日中・日韓に固有の問題ではない。」

p99

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「日中両国の歴史相互理解は、まず、その違いを互いにしっかりと認識することが第一歩であろう。」

p168

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「中国の場合は、歴史教育とは何よりも歴史の学習を通じた政治教育・思想教育である。

教科書は、1990年代に国定制から検定制になって、複数の教科書が出版されるようになったとはいえ、

極めて直接的に政権政党(中国共産党)と政府の意向が歴史教育・歴史教科書に反映される。」

p169

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「中国の歴史教育の目的は、

歴史の学習を通じて『良い思想と品位を身につけ』『愛国の熱情と民族の誇りを高め』ることである。

『良い思想』とは何か? それは、『中国共産党に従って社会主義の輝ける道を歩む信念を確信』することであり、

そのためには『きら星のように輝く多くの共産主義の戦士たち』の

『遠大な理想と高尚な気骨、毅然とした人格』を学ばなければならない。

そして歴史上の人物や事件に対して見方が分かれたり対立したりする場合には、

『マルクス主義の観点を用いて、史実を分析し判断することによってのみ、正しい結論を得ることが出来る』というのである。」

p173

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「1900年夏に黒竜江岸の露清国境の町ブラゴベシチェンスク(海蘭泡)でおこった、

ロシア軍による中国人民大量虐殺事件は全文削除されている。

あるいは、対露関係に配慮した措置かもしれない。」

p219

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「南京虐殺事件については、日本の教科書でも、ほぼ全てが取り上げている。

虐殺事件の存在自体は否定できないが、犠牲者の人数については、

現在の中国政府の公式見解、三十万人というのが誇大であるという点は、日本側が主張するところである。

(中略)

『中国歴史』では、極東国際軍事裁判の統計により、

『身に寸鉄も帯びない中国人住民と武器を捨てた兵士で虐殺された者の数は三十万人以上に達した』とあるが、

同裁判の判決では『二十万人以上』となっていた筈である。

p242

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「まず何よりも、歴史についての考え方、歴史教育のあり方や目標、歴史叙述の仕方などの違いについて、

相互にしっかりと認識しあうことが、歴史の相互理解の大前提となろう。

そして『唯一の正しい歴史理解』を相手に押しつけることなく、

政治やイデオロギーの壁を越えて、出来る限り歴史を広い視野に立って多角的に理解し、

異なった認識や見方に率直に耳を傾けるよう、互いに自覚的に努力することが不可欠であろう。

ろくろく、相手側の歴史教科書を読みもせず、相手の言い分も聞かず、感情的に反発することは、

百害あって一利なく、厳に避けなければならない。』

p252 あとがきより

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